あなたの職場の設備では、シグナルタワー(積層表示灯)が何色のときに何を意味するだろうか。
「緑は運転中、赤は異常」
そう答える方が多いかもしれない。
しかし実際には、同じ会社であっても職場ごとにルールが異なり、場合によっては同じ工場内でも設備ごとに意味が違うことがある。
設備の状態を誰でも直感的に理解できるようにするための表示灯なのに、その意味が統一されていないのは少し不思議な話だ。
今回は、そんなシグナルタワーの色のルールについて書いてみたい。
■意外と決まっていないシグナルタワーの仕様
設備導入や改造に関わっていると、
「シグナルタワーの仕様を出してください」
とお願いすることがある。
ところが、すぐに仕様が出てくるケースは意外と少ない。
もちろん設備にはシグナルタワーが付いている。
しかし、
- 何色をどの状態で点灯させるか
- 点滅は使うのか
- 点滅周期はどうするのか
といったルールが明文化されていないことが珍しくない。
これは私の推測だが、
「あまり気にされていない」
というより、
「あまり活用されていない」
の方が実態に近い気がしている。
■タッチパネルの存在が大きい
最近の設備には、高機能なタッチパネルが標準的に搭載されている。
タッチパネルを見るだけで、
- 運転中
- 停止中
- アラーム発生
- 部品供給待ち
- 原因別の異常内容
などが、文字や色付きで詳細に表示される。
わざわざ高い場所に付いているシグナルタワーを見なくても、設備の状態は手元で確認できる。
そのため、状態表示という役割だけで考えれば、シグナルタワーの重要性は以前ほど高くなくなっているのかもしれない。
■それでもシグナルタワーは無くならない
それならシグナルタワーは不要なのかと言うと、そうでもない。
工場を見渡せば、今でもほとんどの設備に搭載されている。
理由は単純だ。
遠くからでも設備の状態が分かるからである。
タッチパネルは情報量が豊富だが、近くまで行かなければ見えない。
一方でシグナルタワーは、
「あの設備は止まっているな」
「あちらで何か異常が起きているな」
ということが離れた場所からでも一瞬で分かる。
情報量では負けても、視認性では今でも優秀な存在なのだ。
■実はJISに推奨ルールがある
シグナルタワーの色は法律で定められているわけではない。
しかし、日本工業規格(JIS)では表示灯の色の意味が推奨規格として定義されている。
代表的なものは以下の通りだ。
- 赤:緊急(危険な状態)
- 黄:異常(注意や介入が必要な状態)
- 緑:正常(安全な状態)
- 青:指令(作業者の対応が必要な状態)
- 白:一般(待機状態などの中立状態)
細かな運用は会社ごとに異なるが、迷ったらまずこの考え方に合わせるのが無難だろう。
少なくとも、
「この色は何となく」
で決めるよりははるかに良い。
■なぜ人はJISを知らなくても理解できるのか
面白いことに、多くの人はJISを知らなくても表示灯の色から意味を推測できる。
理由は簡単だ。
私たちは日常的に信号機を見ているからである。
信号機の色のイメージは、
- 緑:進んでよい
- 黄:注意
- 赤:停止
として広く浸透している。
そのため設備を見たときも、
- 緑=安全そう
- 黄=何か気を付ける必要がありそう
- 赤=危険そう
と自然に認識する。
だからこそ、一般的な感覚から外れた運用は混乱を生みやすい。
■問題は色ではなく運用ルール
とはいえ、色だけ決めれば終わりではない。
ここからがシグナルタワーの難しいところだ。
ある職場で
「隣の設備と同じ仕様にしてください」
と言われたことがある。
観察していると、黄色ランプが0.5秒程度の周期で高速点滅していた。
意味を聞くと、
「部品供給待ちです」
とのことだった。
さらに見ていると、今度は黄色ランプがゆっくり点滅し始めた。
聞いてみると、
「計画停止中です」
とのこと。
同じ黄色でも、
- 点灯
- 高速点滅
- 低速点滅
で意味が異なるのである。
設備を設計する側としては、
一体何パターン準備すれば良いのだろう
という気持ちになる。
■気付けば職場ごとの独自文化になる
こうして現場ごとの要望を取り込んでいくと、
- 黄色高速点滅は供給待ち
- 黄色低速点滅は計画停止
- 黄色長短点滅は段取り要求
といった独自ルールがどんどん増えていく。
そして最終的には、
同じ会社なのに職場ごとで意味が違う
という状態になる。
これでは本来の目的である
誰でも設備状態を理解できる
を達成できない。
ベテランは分かるが、異動してきた人や応援者は分からない。
標準化されていない表示は、もはや表示として機能しなくなってしまう。
■だからこそ標準化が重要
私は設備導入を行うとき、
まずJISの考え方をベースにするようにしている。
もちろん現場の事情によって多少のアレンジは必要になる。
しかし、
- 危険は赤
- 異常は黄
- 正常は緑
という基本ルールは、できるだけ崩さない方が良い。
人は思っている以上に色で判断している。
だからこそ、設備の表示ルールは個人の好みではなく、組織として統一していくべきだと思う。
私の勤務先でも、事業部や設備ごとに点灯パターンが異なっている。
いつかは全社的な標準化ができればと思っている。
■余談:私が一番驚いたシグナルタワー
最後に、SIer時代の忘れられない話を紹介したい。
あるお客様の設備では、
設備が運転しているときは赤色点灯。
設備が停止しているときは緑色点灯。
だった。
最初は故障しているのかと思った。
理由を聞くと、
「設備が動いているときは危険だから赤」
「設備が止まっているときは安全だから緑」
という考え方なのだという。
さらに驚いたことに、
起動スイッチと停止スイッチの色まで一般的な工業規格と逆になっていた。
もし事前説明を受けていなければ、
「異常停止している」
と勘違いして安全扉を開け、設備を停止させていたかもしれない。
色の意味は、人が無意識に判断している。
だからこそ、そのルールを統一することには大きな意味があるのだと思う。
■おわりに
あなたの職場の設備は、どんなときに何色が点灯するだろうか。
そして、そのルールは隣の設備でも同じだろうか。
設備の標準化という観点でも、一度見直してみる価値はあるかもしれない。


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