最近、人材不足の影響もあってか、新卒者がそのまま生産技術部門へ配属されるケースが増えているように感じる。
もちろん、新卒者の能力を否定するつもりはない。実際、論理的思考力や学習能力、柔軟な発想といった面では、若手ならではの強みも多い。
しかし、生産技術という仕事に限って言えば、それだけでは十分ではないと思っている。
なぜなら、生産技術とは単に設備を導入する仕事ではないからだ。
■生産技術とは「現場を設計する仕事」
生産技術者は様々な工法、工具、設備、作業方法を組み合わせながら、最適な生産工程を作り上げていく。
設備選定を行う。
レイアウトを考える。
作業手順を決める。
品質や安全性を確保する。
一見すると設計業務に近い仕事に見えるかもしれない。
しかし実際には、
「その工程で人がどう動くのか」
を考える仕事でもある。
どれだけ理論上優れた工程であっても、実際に作業する人にとって使いにくければ意味がない。
■現場経験がないと何が起こるのか
例えば、生産ラインのレイアウトを検討するとする。
新卒3年目程度の若手生産技術者でも、設備の調査や過去事例の確認を行えば、ある程度のレイアウト案を作ることはできる。
しかし実際に完成してみると、
- 作業者が工程内を何度も往復する
- 工具を頻繁に持ち替える
- 重い工具や治具を何度も上げ下ろしする
- 部品を取りに行くための動作が多い
- 作業姿勢が不自然で疲労が大きい
といった問題が発生することがある。
図面上では成立していても、実際の作業を考えると効率も負担も大きくなってしまう。
なぜこうなるのか。
答えは単純で、
自分が作業する姿を具体的にイメージできていないから
である。
■現場経験者が持っているもの
数年間現場で作業を経験した人であれば、このような問題に気付きやすい。
なぜなら、
「もし自分がこの作業をやるとしたらどうだろう」
という視点を自然に持てるからだ。
この治具は重すぎないか。
この動線は遠くないか。
毎日何百回も繰り返したときに疲れないか。
異常が起きたらすぐ対応できるか。
こうした感覚は、教科書や資料だけではなかなか身につかない。
実際に現場で作業し、苦労し、改善を経験した人ほど、作業者目線で工程を見られるようになる。
■「知識」と「経験」は別物
もちろん、現場経験がなくても知識を学ぶことはできる。
工程設計の考え方も学べる。
改善手法も学べる。
しかし、
知っていることと、理解していることは違う。
例えば、
「作業者の移動を減らすべき」
という知識を持っている人は多い。
しかし実際に一日中現場で作業した経験がある人は、
「たった数歩の差でも、1日・1か月・1年でどれほど負担になるか」
を肌で理解している。
この差は非常に大きい。
■だからこそ現場経験が必要
私は、新卒者を生産技術へ配属すること自体に反対しているわけではない。
むしろ若いうちから生産技術の視点に触れることは有益だと思う。
ただし、現場を十分に知らない状態で工程設計や改善活動の中心を担うのは難しい。
生産技術者として成長していくのであれば、
まずは2〜3年でも現場を経験する。
実際に作業する。
改善を受ける側を知る。
そうした土台を作ってから工程設計や設備導入に携わる方が、結果として優れた生産技術者になれるのではないだろうか。
■おわりに
生産技術に必要なのは、思考力だけではない。
解決力だけでもない。
判断力だけでもない。
それらは確かに重要だ。
しかし、その力を発揮するためには土台が必要である。
その土台とは何か。
私は、
「いかに現場を知っているか」
だと思っている。
現場経験というベースの上に、思考力や解決力、判断力が積み重なることで、初めて生産技術者としての価値が生まれる。
生産技術の門を叩こうとしている人にも、そして採用や育成に携わる人にも、そのことを改めて考えてもらえれば嬉しい。


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