自働化設備の構想を部下に任せていたのだが、なかなか前に進まない。
話を聞いてみると、
「どういう構成にすればよいのか分からない」
という。
彼は中途採用で入社してきた人間で、前職では某大手メーカー向けの自働化設備を構想から立上げまで担当してきた経験を持っている。
ただ、話を聞いていると少し気になることがあった。
どうやら前職では複数人のチームで設備構想を進め、アイデアを出し合いながら形にしていくスタイルが中心だったようだ。
一方で、今の環境ではまず一人で構想を立ち上げ、ある程度の方向性を作らなければならない。
その違いに戸惑っているように見えた。
設備構想が進まなくなる理由
設備構想で悩み始めると、こんなことを考え始める。
- ロボットは何を使うべきか
- 製品の流し方はどうするべきか
- ロボットは何台必要か
- 目標タクトを満たせるか
- もっと良い構成があるのではないか
もちろん、どれも大切な検討項目だ。
しかし、これらを最初から完璧に決めようとすると、ほとんどの場合前へ進めなくなる。
なぜなら、専用設計の生産設備に絶対的な正解は存在しないからだ。
極端な話をすれば、材料や部品を投入して、要求品質を満たした製品が出てくれば設備としては成立する。
だからこそ難しい。
選択肢が無限にあるからだ。
どうすれば100点の設備になるのか。
どうすれば最適解を見つけられるのか。
そう考え始めると、一歩も動けなくなる。
■私は「正解探し」をしない
設備構想をするとき、私はあまり
「正しい設備は何か」
を考えない。
代わりに、
「自分はどんな設備を作りたいか」
から考える。
さらに言えば、
「自分が毎日使うなら、どんな設備が嬉しいか」
で考える。
例えば、人手作業で1日100個しか作れない製品があるとする。
自働化設備を導入して1,000個作れるようになった。
それだけ見れば素晴らしい設備だ。
しかし、その設備が、
- 常に部品を供給し続けなければ止まる
- 少しでも供給が途切れると能力が出ない
- 作業者が一日中張り付かなければならない
という設備だったらどうだろう。
設備完成後、毎日始業から終業まで神経を張り詰めながら部品供給を続ける。
私ならそんな職場では働きたくない。
■メンテナンスまで考える
同じことはメンテナンスにも言える。
高機能な機器をふんだんに使った最新鋭の設備。
複数のロボットが連携し、自動で製品を完成させる。
見た目は非常に格好いい。
しかし、ある日ロボットの位置がずれてしまったとする。
ティーチングポイントは420点。
すべてやり直し。
周辺機器も再設定。
条件出しもやり直し。
品質確認も最初から。
その間、生産は停止する。
確かに最先端かもしれない。
だが、私なら運用したくない。
設備は導入することが目的ではない。
使い続けることが目的だからだ。
■自分の手中に収まる設備を考える
だから私は、
自分が管理できる設備かどうか
を重視する。
- 部品の投入方法
- 製品の流し方
- 品質保証の仕組み
- 組立方法
- 異常発生時の復旧方法
- メンテナンス性
それらすべてが自分の手中に収まるサイズの設備を考える。
すると不思議なことに、
- どのロボットを使うべきか
- 何台必要なのか
- どんな流し方が良いのか
という答えは自然と見えてくる。
設備構成を先に決めるのではない。
どんな設備にしたいかを決める。
その結果として構成が決まるのである。
■現実のSQCDを考える
設備を使う立場で考えると、
- 無理をしたくない
- 安全に働きたい
- 品質を安定させたい
- 納期を守りたい
という極めて普通の要求に行き着く。
結果として、SQCDのバランスを取ろうとする。
一方で、
- ロボットをもっと増やそう
- とにかく全自動化しよう
- 最新技術を試してみよう
- 展示会で見たものを全部入れよう
といった発想は目的と手段が逆転していることが多い。
技術そのものが悪いわけではない。
ただ、それを使うことが目的になった瞬間、設備は現場から離れていく。
■「人として当たり前」を基準にする
この考え方で設備を構想すると、設備の軸がぶれなくなる。
前提になるのは難しい理論ではない。
- けがをしたくない
- 良品を造りたい
- 無理なく働きたい
- 納期を守りたい
ただそれだけだ。
人間として当たり前の感覚である。
だからこそ、完成した設備には自信が持てる。
もちろん100点は取れない。
どんな設備でも改善点は残る。
それでも、
「この設備が無いと困る」
と言ってもらえる設備になれば十分ではないだろうか。
■まとめ
設備構想で悩む人は少なくない。
特に真面目な人ほど、最初から正解を探そうとして動けなくなる。
しかし、設備構想に絶対的な正解はない。
だから私は、
「自分が使いたい設備はどんな設備か」
というところから考える。
操作しやすい。
保全しやすい。
無理がない。
安全である。
そんな設備を目指していくと、ロボットの選定や設備構成は後からついてくる。
もし設備構想で立ち止まってしまったら、まずは理想の設備を思い描いてみてほしい。
自分が作りたい設備を考えることは、案外この仕事の面白さそのものなのかもしれない。

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