落下品をゴミと思うなかれ

再発防止

組立ラインを観察するとき、私は落下品に注目するようにしている。

それは過去に経験した、ある品質問題がきっかけだ。

■「あり得ない不良」の発生

ある組立ラインで、製品内部の小さな部品が正規とは異なる方向で組み立てられた状態で市場へ流出した。

その部品は設備によって自働組立されており、シリンダーを組み合わせた単純な機構で組み付けられていた。

設備仕様を確認すると、

  • 部品の方向違いは機構上発生しない
  • 部品が正しい位置にない場合は設備が停止する
  • 欠品でも設備は停止する

という仕組みになっていた。

そのため、生産技術では設備機構に焦点を当てて徹底的な検証を行った。

しかし、どう試しても不良は再現しない。

「何か偶発的な現象だったのだろう」

そう結論付けられ、不良は徐々に記憶の中から薄れていった。

■再び発生した同じ不良

ところが数か月後、同じ種類の不良が再び流出した。

ただし、前回とは少し違った。

方向違いではあるものの、その角度が微妙に異なっていたのだ。

当然ながら今回も設備機構が疑われた。

しかし、生産技術は前回と同じ轍を踏まないよう、機構検証だけでなく現場観察も実施することにした。

すると、ある違和感に気付いた。

設備の安全扉周辺を囲うアルミフレームの溝に、その小さな部品が何個も挟まっていたのである。

■なぜそこに部品があるのか

その場所は部品供給用のパーツフィーダーから離れていた。

もし作業者がフィーダーへ部品を投入する際に落としたのであれば、その場所に部品が集まることは考えにくい。

なぜそこに部品があるのか。

その理由を作業者へヒアリングした結果、ようやく真因が見えてきた。

実は設備は高い頻度でその小さな部品を落としていたのである。

あまりにも頻繁に発生するため、現場では保全担当へ依頼し、

「もう一度スタートボタンを押したら自動でリトライする」

という機能まで追加されていた。

そのため、

  • 落下しても設備は再挑戦する
  • 工程バランスはほとんど崩れない
  • 生産数にも大きな影響は出ない

という状態になっていた。

問題が見えないまま運用されていたのである。

■真因は設備ではなかった

さらに話を聞くと、落下した部品は終業時に回収されていた。

回収品はパーツフィーダーへ戻されたり、落下が多い場合には手組み用の予備品として利用されたりしていた。

そして、不良の正体もここにあった。

設備で落下した部品を回収し、後から手作業で組み付けた際に方向違いが発生していたのである。

設備の組立品質を疑い続けていたが、実際には設備が作り出した「再利用部品」が手作業工程へ流れ込み、人為ミスによって不良が発生していた。

つまり、

設備落下

回収

再利用

手組み

方向違い発生

という流れだった。

■そしてルールが作られた

真因が判明した後、現場では新たなルールが定められた。

落下した部品は再投入しない。再利用しない。

当たり前に聞こえるかもしれない。

しかし、ルールとして明文化されていない現場では、

  • まだ使えそうだから戻す
  • もったいないから再利用する
  • 予備品として保管する

といった運用が暗黙のうちに行われていることがある。

だからこそ、落下品の取り扱いは細かくルール化する必要がある。

■落下品は異常の証拠

この経験以来、私は組立ラインを見るときに落下品へ注目するようになった。

現場では落下品を見ると反射的に拾いたくなる。

しかし改善や品質の観点では、

「なぜ落ちたのか」 「その後どうなるのか」

の方が重要である。

落下品は単なるゴミではない。

そこには、

  • 搬送不良
  • 把持不良
  • 供給不良
  • 作業性不良
  • 保全不足
  • 標準化不足

など、何らかの異常が隠れている。

そして組立ラインでは、その異常に人が対応することで新たな品質問題が生まれることも少なくない。

■落下品を5W1Hで考える

もしラインで落下品を見つけたなら、次の視点で考えてみてほしい。

  • What:何が落ちたのか
  • Where:どこで落ちたのか
  • Who:誰が関与するのか
  • When:いつ発生するのか
  • Why:なぜ落ちるのか
  • How:その後どのように扱われるのか

とくに重要なのは How である。

捨てられるのか。

保管されるのか。

再投入されるのか。

手組みに使われるのか。

落下した後の流れを追うことで、思いもよらない真因にたどり着くことがある。

■落下品を拾う前に観察する

改善初心者は、

  • 落ちているから拾う
  • 散らかっているから片付ける

という行動を取りがちだ。

もちろんそれ自体は悪いことではない。

しかし真因追究をするなら、一度立ち止まって観察してほしい。

誰が拾うのか。

どこへ持っていくのか。

どれくらいの頻度で発生するのか。

なぜ発生し続けているのか。

その観察から、本当の問題が見えてくる。

■おわりに

品質問題の調査では、設備や図面やデータに目が向きがちだ。

しかし真因は意外な場所にある。

今回の事例で真因へ導いてくれたのは、不良品でも設備ログでもなかった。

安全扉のフレームに挟まっていた、何気ない落下品だった。

だから私はラインを見るとき、まず床を見る。

落下品は、現場が発している異常のサインである。

そしてそのサインを追いかけることが、品質向上への近道になる。

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